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名著「影響力の武器」から経営に活用できる心理学②

前回に引き続き、「影響力の武器」について書きます。ここ1年で読んだ本でダントツ1位だからです。前回は第2章「お返しの影響力」まで書きました。
影響力の武器写真
名著「影響力の武器」から仕事に活用できる心理学①

今回は第3章について書きます。「一貫性の影響力」についてです。

この本の要点&一貫性の影響力とは

一貫性の影響力について書く前に、前回のおさらいをざっくりと。まず、この本についてです。「知ってるし~」もしくは「前回も読んだ」って方もぜひお付き合い下さい。
影響力の武器とは?

ロバート・B・チャルディーニという社会心理学者に書かれた名著。何十年も前に書かれた本だが、現在も世界中で売れ続けいる。
人はどういう状況で判断力が鈍るのか?成長している企業は、心理学をどのように活用しているのか?それに対して防衛する方法はあるのか?について、非常にわかりやすく書かれている。

この本の要点をまとめると、、
①人は、「考える」&「物事に向き合って判断する」という負担の大きい仕事から逃げたい生き物である。
②そのため、万人共通の簡易版の判断基準がある。考える作業を簡単にするため。「迷った時はこれを選べば、だいたいオッケー」ってやつ。
③しかし、この判断基準によってとんでもない判断ミスが生まれたり、無意識のうちに相手にコントロールされてしまう。
④人はどのような状況で、この判断基準を使ってしまうのか?条件は何か?企業はどのようにそれを利用しているのか?
⑤それには、「お返し」「一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」の6つの影響力が関係している。

というものです。
前回は1つめの「お返し」について書きました。

今回は2つめの「一貫性」について書きます。

人は自分のキャラを全うするものなんだなぁ

「一貫性の力」をギリギリ原型が残っているくらいのレベルで噛み砕くと、↑のタイトルになります。みつを風になりました。人は一貫した人間でありたいという欲求です。前回の「お返し」もそうですが、これは、社会人になるためにプログラムされた習性です。我々は、「人に恩返ししなさい」と同じく、「言動をころころ変えてはいけない。筋の通った人間であるべき」という教育を受けています。これ自体は、全く間違っていません。もし自分なら、言っている事がコロコロ変わる相手を信用できません。しかし、人は「一貫しなくては」という意識のため、判断が鈍り、簡易版の基準を使ってしまいます。そして大きなミスにつながったり、相手にコントロールされてしまいます。
もっと言うなら、合理性を明らかに欠くと分かっていても、一貫したくなる生き物なのです。ここで本書の事例を紹介したいと思います。

あるところに、ティムとセーラーという若いカップルがいました。ティムは大酒飲みで、結婚する気もないようです。セーラーは愛想をつかし、別の男性と付き合いだします。セーラーが結婚を決意した頃、ティムから連絡がきます。「もう一度やり直さないか」しかし、セーラーは断ります。「結婚したっていい」とティムは粘ります。セーラーは「新しい相手の方がいい」と突き放します。とうとうティムは「酒をやめる」と言い出しました。そこまで言うなら、とセーラーは婚約を破棄し、ティムとやり直し、一緒に暮らし出します。
一ヶ月もしないうちに、ティムは「やっぱり酒をやめる必要は無いと思う」と言い出しました。その一ヶ月後には「もう少し様子を見てから結婚するべきだ」と言うようになりました。そしてそれから2年がたちました。ティムとセーラーはいまだに付き合っています。ティムは相変わらず大酒飲みで、結婚の計画もありません。しかし、セーラーは以前にも増してティムに夢中です。

 

選択を迫られた事によって、私にはティムしかいない事がわかった。そうセーラーは言っています。つまり、恋人を棄ててティムと一緒になったにも関わらず、事前の条件が何も満たされなかったにも関わらず、セーラーは以前よりも幸せになったのです。
著者はこのように分析しています。
「私たちは、自分のこれまでの行動や決定と一貫した思考や信念を持ち続けたいと思うあまり、ときには自分をだますことさえあります。」
我々は、一度自分で選択した物事に対して、かなり執着しているという事でしょう。また前述したように、一貫性を保つことで、考える事から逃げているとも言えます。
best choice

一貫性の力、、、、その恐るべき力の使い方を刮目せよ

次に企業がどのようにこの力を使っているのか? 本書の事例をご紹介します。なるほどなぁ~と思った次第です。初めて聞く話でした。
ある玩具メーカーの話
玩具メーカーの儲け時はいつごろでしょうか?そうです。クリスマスです。逆にいえば、どうしてもクリスマスにピークがきて、その後反動がきます。メーカー側からすれば、年末を過ぎても売れている状態が理想ですよね? そのためにはどうすればいいでしょう?それにはクリスマスの後に子供たちがおもちゃをもっと欲しがるようにすることではありません。年末でお金を使いはたしてしまった親が子供に、別のおもちゃを買ってあげようという気分にさせることです。
、、、、、、、かなりハードルの高い行動ですよね?
そこで玩具メーカーはどうしたか?
①クリスマス前に、特定のおもちゃのコマーシャルを大々的に行う
②そうすると、親は子供とクリスマスに、このおもちゃを買うことを約束してしまう。
③しかーし!メーカーはそのおもちゃを店に少ししか卸さない。
④クリスマス前に店に行っても、当然目当てのおもちゃは売り切れ。しかし、クリスマスなので、別のおもちゃは買わなきゃいけない。メーカーは代用品をたっぷり卸しておく。
⑤年明けに、再度コマーシャルを流し始める。そうすると、子供はさらにそのおもちゃが欲しくなる。「買うって約束したじゃないか」と親にぐずる。
⑥親は自分の言葉を裏切りたくない心理が働き、渋々お店に買いに行く。

、、、、、、汚いっ!(笑)なんてやつらだって感じですよね?ただ、法律を犯しているわけではありません。※ただし、やりすぎて不正広告として罰金を払う事になった会社もあるそうです。

一貫性の力が働く条件

2つの事例を紹介しました。では、どのような状況で、一貫性の力は働くのでしょうか。
①約束
②自分の行動や表明
③自己イメージや役割の認識

先ほどのおもちゃのエピソードが、①の約束の力が働いたものでした。誰かと約束をした後、それを破棄する事は一貫したいという欲求に反します。もう一つ前のセーラーの話は、②の行動と表明になります。ティムを選んだ事で、その事に縛られる事になりました。
約束、行動、表明。もしくは「あなたって、〇〇な人だよね」と言われる事によって、自己イメージを認識する事によって始まります。
以下本書より抜粋

承諾を引き出す上で鍵となるのは、最初のコミットメントを確保することである。コミットメント(つまり、自分の意見を言ったり、立場を明確にすること)をしてしまうと、人はコミットメントに合致した要求を受け入れやすくなる。したがって、多くの丸め込みのプロは、後でやらせようとしている行動と一環するような立場を最初に取らせようとする。しかし、すべてのコミットメントが必ず効果を発揮するわけではない。コミットメントが最も効果的に働くのは、行動を含み、周囲に知られ、努力を要し、自分の意思でやったと考えられる時である。

仕掛ける側のシンプルな方法

先に挙げたおもちゃ屋よりも、かなりシンプルな方法です。エジプトの元大統領の手口です。交渉になる前に相手にこう言うそうです。
「あなたたちの国民は協調性が高く、公正だと広く知られている」
すると、相手は気分を良くするだけではなく、このイメージを守りたくなり、交渉に積極的に進める効果がありました。まず、相手に守るべき高評価を与え、それによって自身の利益と合致した行動を取らせるという手法です。他者が自分に持っている、高いイメージを守りたくなるのです。

飲食店様の予約でちょっと使える話

よく飲食店で問題になるのが、「予約したお客さんが連絡無しにキャンセルする問題」です。一貫性の力を使って解決したケースが紹介されていました。
予約の電話を受けた時、「変更がありましたらご連絡下さい」と言うことをやめさせました。代わりに「変更がありましたらご連絡いただけますか?」と相手に聞き、答えを待つようにさせました。ポイントは聞いた後に相手の回答を待つことです。自分で「わかりました」と答えた事で一貫性の力が働くのです。これによってお店に現れないお客さんが3割から1割に減ったそうです。

2つのケースの重要なところは、相手に言わせる、もしくは、相手に守るべきイメージを与えるということです。
根本的なところはシンプルなので、応用が効きそうです。

努力して獲得したものは尊いと思いがち

あるアメリカのハイスクールで、社交グループに入会する際、「地獄週間」と呼ばれる入会儀式があるそうです。入会希望者は、年長のメンバーが考えぬいた、限界ギリギリの試練を与えられます。体力、精神力、羞恥心の限界を試すためのものです。実際に死人が出るケースもあります。
この試練は、単純に暴力を振るわれる事も含みます。両手を頭の後ろに組み、先輩に腹を殴られます。なにがあっても両手を解く事は許されません。また、雪山に連れていかれ、薄着で登山を命じられたり、地下室に閉じ込められて、飢餓状態にさせられたりしました。
たびたび死人や重傷者が出るために、それらを禁止しようと行政が動きますが、この儀式はしぶとく残っています。秘密裏に行われているのです。

新人いじめが無くならない理由

なぜそこまで新人いじめが大事なのか?それは、

「何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、苦労なく得た人よりも、得たものの価値を高く感じるようになる」という事です。つまり、グループに加入する時に壮絶な苦しみを経た人は、「このグループは最高だー!あれも、これも素晴らしいっ。 俺、凄いがんばる!」となるのです。つまり、この儀式を行う事で、忠実で献身的なメンバーが増え、強力な集団になるのです。
この社交グループは、普段は公共奉仕活動をしています。町の清掃や病院のボランティアです。そのため、加入儀式も「公共奉仕活動を何十時間もさせる」とかの方が理にかなっていそうです。しかしあえてそうしません。先の例に挙げたように、人は自分で決めた事に一貫性を持ちます。公共奉仕活動をさせてしまうと、公共の利益のためにやったと思ってしまいます。あくまで自分の意思でやっていると思わせなければならないのです。
相手をコントロールするには、魅力的なご褒美で釣ったり、強く脅してはいけないという事です。いかに相手に「自分で決めた。自分で苦しみに耐え抜いた」と思わせられるかが重要です。
承諾先取り法イメージ

承諾⇒はしごを外すテクニック

そろそろ長くなってきましたね(笑)もうちょっとコンパクトにまとめたいのですが、、、
次は承諾先取り法というテクニックです。まず相手にとって有利な条件を提示し、喜んで買うという決定を誘い出します。営業に置き換えると簡単ですよね?原価ギリギリの見積もりや、豪華なおまけを用意しておくのです。そして決定がなされてから契約が完了するまでのあいだに、もともと用意していた有利な条件を巧みに取り除きます。一番最初のティムとセーラーの話もそうでした。「結婚」と「禁酒」の条件を出して、相手に別の男性との結婚をやめさせ、元のサヤに収まりました。ティムを選ぶという決定のあと、約束が守られなかったにも関わらず、セーラーは前よりずっとティムに夢中になりました。
「与えておいて決心させ、取り上げる」のです。

自動車ディーラーが使った一貫性の力

まずお客さんにとても有利な、競合店と比べて400ドルも安い値段を提示します。しかし、本当にそのままの値段で売るわけではありません。安い価格を提示する唯一の目的は、客に車を買う決心をさせる事です。いったん決定させた後、今度は様々な方法で、その車に対する客のコミットメントの感覚を強めていきます。何度も、自分が買うと決めている事を確認させられるのです。何枚もの契約書に記入させ、長期ローンの条件を取りまとめ、ときには「どんな車かお分かりになりますし、ご近所や職場の方々に見せることもできますから」と言って、一日試乗するように提案します。たいていの場合、このねちっこい確認作業で、買う側はさまざまな理由を考え出して、自分の選択を後押しします。「燃費もいいし、エクステリアも格好いいし、加速もスムーズじゃないかしら」となるわけです。自分の投資を正当化しようとします。
そこから、第2段階です。
計算上のミスが発見されたりします。例えば、「すみません~クーラーの値段を忘れてました~クーラー必要ですか?必要なら400ドル上乗せになります~」とやるわけです。クーラー、絶対必要です(笑)
もしくは、「やっぱり上司から赤字になると怒られまして、、、」とやります。車を手に入れるにはあと400ドル上乗せすればいいだけです。もう選んでしまっているという意識から、「上乗せしても、他の店の値段と同じだし、燃費もいいし、エクステリアも格好いいし、加速もスムーズだし、もういいじゃん400ドル払おう」となるわけです。

一貫性の力 まとめ

いかがでしたか?バーーって書いたので、またまた長くなってしまいました。このような心理学は前向きな営業活動やマーケティングにも活用できます。また、知識として知っておく事で、落とし穴にはまらないように踏みとどまる事ができます。承諾先取り方を使われた場合、「時間を巻き戻して、この状況になった場合、果たして選択するか?」という自問自答を行います。そうすると正しい判断力が戻ります。
次回は「証明の力」です。なんだか小難しいタイトルですが、お付き合い頂ければ幸いです。それでは。


2 Responses to “名著「影響力の武器」から経営に活用できる心理学②”

  1. 樫元 敦彦

    大変わかりやすく、勉強になりました。ありがとうございました。非常に見やすく作られており、感動しました。

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